顎関節症とは?

顎関節症は、顎の関節に起こる機能障害の総称です。日本の統計によると、約40%の人が一生のうちに何らかの症状を経験するとされ、特に働き盛りの20代から40代に多く見られます。近年では、スマートフォンの普及による姿勢の悪化や、ストレス社会を反映するように患者数が増加傾向にあります。
顎関節は、私たちが日常的に行う会話や食事、表情の変化など、さまざまな動作に関わる重要な関節です。この関節は、上顎(じょうがく)と下顎(かがく)をつなぐ複雑な構造を持ち、靭帯や筋肉、軟骨などで構成されています。これらの組織のいずれかに異常が生じると、顎関節症として様々な症状が現れることになります。
顎関節症の原因と症状

生活習慣による影響
顎関節症の発症には様々な要因が関係しています。最も一般的なのは過度のストレスによる顎の緊張や歯ぎしりです。現代社会では、仕事や人間関係によるストレスが増加しており、それが無意識のうちに顎に負担をかける原因となっています。
また、スマートフォンやパソコンの長時間使用による不適切な姿勢も大きな要因です。特に「スマホ首」と呼ばれる前傾姿勢は、首から顎にかけての筋肉に過度な負担をかけ、顎関節症のリスクを高めます。さらに、外傷や事故による損傷、加齢による関節の変性、歯並びの問題(不正咬合)なども重要な原因となります。
代表的な症状とその特徴
顎関節症の症状は多岐にわたりますが、主に以下のような症状が見られます:
- 顎を動かす際の痛みや不快感が続く
- 口を開けづらい、または完全に開けられない状態になる
- 顎からの異音(カクカク音、ポキポキ音など)が気になる
- 頭痛や耳鳴り、めまいなどの随伴症状がある
これらの症状は、朝起きた時に特に強く感じられることが多く、日中の活動に支障をきたす場合もあります。また、症状が進行すると、食事が困難になったり、会話に支障が出たりすることもあります。
当院での治療特徴

総合的な診断アプローチ
当院では、問診、触診、画像診断を組み合わせた多角的な診断を行い、症状の原因を特定します。問診では、症状の発症時期や生活習慣、ストレス要因などを詳しく確認し、患者様の状況を総合的に把握します。
また、最新の医療機器を用いた画像診断により、顎関節の状態を詳細に観察します。これにより、軟骨や骨の状態、関節の動きなどを正確に評価し、最適な治療方針を決定することができます。
複合的な治療プログラム
治療は、マウスピースを用いたスプリント療法を中心に、複数のアプローチを組み合わせて行います。スプリント療法では、就寝時に装着する特殊なマウスピースにより、歯ぎしりや食いしばりによる顎への負担を軽減します。
これに加えて、お口周りの筋肉のマッサージ指導や、正しい姿勢・生活習慣の指導も行います。必要に応じて、消炎鎮痛剤などの投薬治療も併用し、痛みの軽減を図ります。また、定期的な経過観察により、治療効果を確認しながら治療内容を調整していきます。
当院の顎関節症治療のメリット・デメリット
期待できる改善効果
治療を行うことで、まず顎の痛みや不快感が軽減されます。これにより、食事や会話がスムーズになり、日常生活の質が向上します。また、開口障害の改善により、歯科治療や口腔ケアも行いやすくなります。
さらに、顎関節症の治療は、頭痛や肩こりなどの関連症状の改善にも効果があります。特に、睡眠時の歯ぎしりが改善されることで、睡眠の質が向上し、日中の疲労感も軽減されることが期待できます。
考慮すべき事項
治療には一定の期間と費用が必要となります。特に症状が重度の場合は、治療期間が長期化する可能性があります。また、マウスピースの装着や定期的な通院など、患者様の協力が不可欠です。
ただし、これらのデメリットは、症状の改善とともに軽減されていきます。また、保険診療が適用される治療も多いため、経済的な負担を最小限に抑えることができます。
当院の顎関節症治療の流れ

初診時の診断
初めての診察では、まず詳細な問診を行い、症状の発症時期や程度、生活習慣などを丁寧に確認します。続いて、顎関節の診査・触診を行い、痛みの部位や関節の動きを評価します。
必要に応じて、レントゲンやMRI検査などの画像診断も実施します。これらの検査により、顎関節の状態を正確に把握し、適切な治療計画を立案することができます。また、歯並びや噛み合わせの状態も確認し、必要に応じて矯正治療の検討も行います。
治療計画の立案と実施
診断結果をもとに、患者様の症状や生活環境に合わせた治療計画を立案します。治療は通常、保存的な治療法から開始し、症状の経過を見ながら段階的に進めていきます。
スプリント療法を中心に、理学療法や投薬治療を組み合わせて実施します。また、定期的な経過観察により、治療効果を確認しながら、必要に応じて治療内容を調整していきます。
経過観察とメンテナンス
症状が改善してきたら、治療の間隔を徐々に延ばしていきます。ただし、完全に治療を終了するのではなく、定期的な経過観察を継続することをお勧めします。
また、再発防止のために、日常生活での注意点や効果的なセルフケア方法について指導を行います。必要に応じて、ストレス管理や姿勢改善のアドバイスも提供し、長期的な症状の安定を目指します。